「さて」について

今朝、出勤前に寝ぼけまなこで『とくダネ!』を見ていたら、番組の冒頭で以下のようなやりとりがあった。

細部までは覚えてないが大体こんな感じの会話だったと思う。

女子アナ「きのう番組で放送した企画の中で、一般の男性の方のインタビューを誤って容疑者として放送してしまいました。ご本人をはじめ関係者の方々にたいへんご迷惑をおかけしました。お詫びして訂正させていただきます」

小倉「(頭を下げながら)申し訳ありませんでした。……さて、連日のスキャンダルで揺れる国会ですが」

事件とまったく関係がない男性を「容疑者」として放送するなんて言語道断である。謝罪してしかるべき案件だ。

ただ、それとはべつに個人的に引っかかったのが小倉氏のセリフの途中に出てくる「さて」という言い回しである。

これはあんまり視聴者にいい印象を与えないのではないか。

上の小倉氏のごとき言い回しは、ワイドショーやニュース番組が誤った報道をしてなんらかの謝罪をする際、よく見かける光景で、前々から気になっていたのだ。

「申し訳ありません」と謝罪の言葉を口にしたその舌の根も乾かぬうちに「さて」である。

なんだか、

「もう謝ったんだからいいだろ」

みたいな傲慢さのようなものを感じてしまう。

言った本人としては傲慢なつもりじゃなかったとしても、どうも心証的によろしくないように思う。

また、以下のようなパターンも多い。

やはりワイドショーなどで著名人が亡くなったことを報道する際、よく見かける光景だ。

コメンテーター「子供のころからよく見てましたよ。素晴らしい役者さんがまたひとり亡くなってしまいましたね」

女子アナ「ほんとうにそうですよね。謹んでご冥福をお祈りいたします。……さて、いよいよやってきました。海開きのシーズンです!」

この切り替えの早さは何事だ。

「ちょっ、おまえ、ついさっきまで悲しんでたのはなんだったんだ!」

と言いたくなろうというものだ。

たとえば貴方が会社員だったとしよう。

ある日、会社へ遅刻してやってきた。当然ながら上司はカンカンである。

「おまえ、また遅刻か。いいかげんにしろ!」

「申し訳ありませんでした!……さて、午後に行われる会議の件ですが」

上司だってこれじゃあ

「“さて”じゃねえよ。ほんとうに反省してんのか!」

と言いたくなるのではないか。

あるいは、私は『とくダネ!』の熱心な視聴者ではないのでよく知らないが、以下のようなパターンもあるのかもしれない。

デーブ・スペクター「ふとんがフットンダ!」

小倉「はっはっはっ。まったくデーブったらあ。……さて、天気予報です。天達ぅ!!」

渾身のジョークをこんなぞんざいな感じに受け流されたら、さすがのデーブも傷つくのではないか。

やはり「さて」はだめだ。

もちろん使うのはかまわないが、タイミングを間違うと危険である。とくに謝罪した直後の「さて」はよくない。

「というわけで」

「そんなわけで」

「ところで」

「で、それは置いといて」

などもだめだ。

「申し訳ありませんでした。……からの~? みなさん今夜はお待ちかね、隅田川花火大会です!」

ましてや、上のような言い回しをしようものなら、そいつの人格自体を疑われかねない。 

 

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