我々人類にとってもっとも身近な危機的状況とはなんでしょうか。
もちろん身近なんだから誰にでも起こりうることです。
「突然、便意に襲われる」
そうです。
やはりなんといってもこれではないでしょうか。
なにしろ、出先だろうが就寝中だろうが便意というものは突然襲いかかってきます。
たとえプロポーズをしている最中であろうと相撲の取り組み中であろうと、
「うんこしたいよー」
という欲求には誰しもが抗えません。
ましてやそれが「下痢」という凶悪極まりない代物だったら、もう、なんというか、たまったものではないわけで、万が一漏らしてしまったら最後、結婚指輪の贈呈も横綱昇進もへったくれもないのです。
もう随分昔の話になりますが、休日のある日、レンタルビデオ屋にエロビデオを借りに行ったときのことでした。
「さあ、今日はどんなエロいやつを借りてやろうか」
などと棚に並ぶエロいやつを意気揚々と物色しておりましたら、まあ、やりました。というか、やってしまいました。
不意に
「うんこしたいよー」
となった直後、あろうことか、盛大に漏らしてしまったのです。
幸い、くだんのレンタルビデオ屋は家から近所にあった個人経営のごくごく小さなお店であり、しかもそのときは私以外に客がおらず、店のご主人も気づいてない様子であって、というか気づいてないと信じたかったわけで、とにかくソッコーで店を出て家に帰った私は、下着とズボンを洗濯機にかけ、シャワーで下半身についている汚物を丹念に洗い流し、どうにか事なきを得ました。
いや、漏らしている時点で事なきどころか一大事であり、しかもその後すぐさま、何事もなかったように再び同レンタルビデオ屋へと足を運んだ私は、まあ、我ながらどうかしていると思わなくもないですが、とりあえずどうにかなりました。
やはり昔の話でまことに恐縮ですが、風も凍りそうな寒い冬の日のことでした。
自動車で走行中、右の車道から一台の軽トラックが猛スピードで私の車を抜き去っていきました。
その車はなにやらもくもくと煙を上げていました。
石焼き芋屋さんのトラックでした。
「そんなにスピード出してたら、芋買いたくても買えんだろ!」
と心の中で一瞬突っ込んだわけですが、「ああ、なるほどな」と思ったのは、たぶんの話ですが、あれは、うんこでしょう。
つまり、
「急にうんこがしたくなってトイレへ向かっていた」
と考えるのが自然でしょう。
本来、ゆっくり走るはずの石焼き芋さんをも思考停止にさせる便意の恐ろしさに、私はおののかざるを得なかったのです。
国会議員が出会い系バーに通っていることが発覚したということでなにやら巷が騒いでいるらしい、との情報を耳にしました。
問題の某議員は先ごろ記者会見を開き
「女性の貧困について実地の視察調査の意味合いがあった」
なんていうなんだかよくわからない言い訳をしたそうで非難が殺到しているらしいですが、
「急にうんこがしたくなったので、たまたま見つけた出会い系バーのトイレに駆け込んだ。小遣いを渡したのはトイレを貸してくれたお礼だ」
なんてふうに釈明していれば、もうちょっとみんながやさしくしてくれたんじゃないかなあと思いました。おしまい。