【第12回】はじめて○○へ行ってきた「麻酔なしで虫歯の治療」

なんだかここ数年、頭がどんどん脳金じみてきているような気がしてならない。

たとえば「今日の仕事はキツいな」と思ったとき、気づいたら私はふとこんな言葉を呟いていたりする。

「よし。気合いだ気合い」

こうして気合いを一発入れた私は日々の雑務を汗水たらしながらこなしていくのである。

私だってバイオリズムというものがある。

「今日はなかなか気合が入らないな」

なんて日も少なくない。

そんなときにはコンビニに立ち寄りレッドブルを購入し、そのまま一気に飲み干し気合いを入れなおす。

「明日も気合いが必要だな」

と思いを馳せた夜には、おろしニンニクをたっぷりと塗りたくった肉塊を食すため、お気に入りのステーキ屋が店をかまえている繁華街へと足を運ぶ。

「食い物って大事だな」

と、この頃よく思う。

もちろんなんでもかんでも気合いでなんとかなるもんじゃあないだろう。

「気合いでハゲを治す」

幸い私はいまのところハゲてないが、いつかハゲた場合、気合いで髪の毛が生えてくるとは到底思えない。

その他

「嫌いな人間を気合いで好きになる」

「雨が降っているので気合いで天気にする」

「気合いで宝くじに当選する」

なども無理だろう。

しかしながら、このようなどうにもならない問題を除いて、大抵の物事を解決するうえで必要になってくるのは結局のところ「気合い」なのではなかろうか。

ちょっと前まではこんなんじゃなかった。私はおもいっきり文系体質の人間であり、むしろこういう体育会系っぽい考え方は苦手だったし、もっと言ってしまえば、こういう脳筋じみた思考をひどく嫌ってさえいた。

それがどういうわけか、このような人間になってしまったのだ。

先日、歯医者に行ってきた。

 

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半年ほどまえ、前歯が虫歯になっていることに気づいたものの、「痛くないから」という理由で長いことほったらかしていたのだが、「いくら痛くないからって穴あいてるし、このままじゃさすがにまずいだろ」ってことで、重い足を引きずりながらようやく行ってきた。

はたして歯医者へ行くことを楽しみにしている人間がこの世の中にいるのだろうか。

「さあ、今日は待ちに待った歯医者だぞ」

出来ればそう考えたいものだが、あいにく大方の人間と同様、私も歯医者は大の苦手だ。

というか、嫌いだ。出来ることなら絶対に行きたくない場所だ。

とはいえ、治療行為に関してはじつはとくべつ苦にはしていない。

たとえば歯を削ったりなんかするときに使用される例のあの器具だ。なんていう名前の器具なのか知らないが、あの「キュイーン」っていう音自体が嫌だ、という人も多かろう。

私だってあの音を心地よいと思ったことはない。

ただまあでも全然耐えられるレベルである。

私が歯医者を苦手としている理由。

それは、麻酔をするための注射だ。

 

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とにかくあれが嫌なのだ。

あのやたらと先端が尖った異物が己の身体に侵入していると考えただけでそらおそろしい気分になってしまう。

「誰がこんなもんを発明したんだ!」

もう作ったやつを見つけて往復ビンタをしたくなるほどなのである。

遊星からの物体X』という映画がある。B級映画の帝王、ジョン・カーペンターがメガホンを取った傑作ホラーだ。

 

遊星からの物体X [Blu-ray]

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私はこの映画が大好きで、ブルーレイソフトも所持しており、もうなんべん鑑賞したかわからないほど観たが、じつはいまだに正視できないシーンがある。

観たことがある人はもうお察しだろうが、そう、注射をするシーンである。

あのデカい昆虫みたいなクリーチャーが腹から飛び出してきたり、人と同化してなんかうにょうにょしたりするシーンはまったく問題なく観ることができるし、なんなら酒飲みながら鑑賞する際は爆笑してしまうほど大好きな場面だが、注射のシーンだけはマジで無理である。事実、注射のシーンだけは毎回早送りしているほどだ。

私がどれだけ注射を嫌いか、このつたない文章でご理解していただけただろうか。

というわけで、麻酔なしで虫歯の治療にチャレンジした。

「麻酔なしでお願いします」

私がそう宣言したとき、気のせいか歯医者がバカを見るような目つきをしているような気がしたが、なんとか了解してくれたのでチャレンジした。

結果から先に書く。

「痛かった」

当たり前である。

3度通って(ほかにも虫歯があった)、1度目と2度目のときは、まあ、もちろん痛かったものの、さほど問題はなかった。

ただ、3度目のときにこう言われてしまった。

「今日の虫歯はいままでのより大きいから痛いですよ。どうしますか?」

「……時間ってどれくらいかかります…?」

「そうですねえ。10分ぐらいです」

「えーっと……とりあえず麻酔なしで。ダメそうだったら手上げるんでお願いします」

「わかりました。無理はしないでくださいね」

こうして私は地獄の10分間を気合いで乗りきった。

はっきり言っておすすめはしない。

ただ、私のように注射がダメという人もいるだろうから、なにかの参考になるんではないかと思う。

ちなみに万が一、おなじ方法をとる場合は、「ありったけの気合いを込めよ」と、老婆心ながらアドバイスさせていただく。

「気合いで虫歯に勝った!」

きっと治療のあとには上のごとき万能感を得られるはずだ。

ともかく気合いがあれば大概のことは克服できる。このままだとアニマル浜口に弟子入りしそうな勢いの私なのである。

いや、やっぱり馬鹿なのかなあ、俺。