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店員がすこぶる不愛想な飯屋

日常 ライブ

俺がはじめてミュージシャンのライブを観に行ったのは1998年のことだ。日本武道館にて行われたオアシスの来日公演である。バンドのサードアルバム『ビィ・ヒア・ナウ』のツアーの一環で開催された来日公演だった。

ビィ・ヒア・ナウ デラックス・エディション(完全生産限定盤)

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ライブの内容自体はほとんど記憶にない。ただ、なにしろはじめてのライブだったので、観に行く俺自身が無駄に緊張していたのと、ライブ終盤に披露された「シャンペン・スーパーノヴァ」のアウトロの演奏がやたらと長かったのはなんとなく覚えている。

そんなおぼろげとなってしまった遥か昔の記憶だが、ひとつだけはっきりと覚えていることがある。

武道館の目の前で開場時刻をいまかいまかと待ち構えていたときのことだ。

武道館の周りは俺と同じように入場するため待機している客でごった返していた。その中に、オアシスのヴォーカリストであるリアム・ギャラガーがいるのを発見したのだ。

いや、正確に言えばリアム本人ではもちろんなかった。「リアム・ギャラガーのそっくりさん」だった。

にしても、マジでものすごく似ていてビビった。

服装はいかにもリアムが来ていそうな格好だったし、髪型もそっくりそのままだった。顔も日本人のくせにこの日のために整形してきたんじゃないかと思うぐらい本物そっくりで、おまけにがに股で肩をいからせながら歩くリアムのお馴染みのしぐさも完璧にコピーしていた。

きっとリアムの熱狂的なファンなのだろう。

まあ、気持ちはわからんでもない。

俺にもおなじようにリアムの髪型ふうにしてもらうように美容院にわざわざ通っていた時期があるし、リアムが愛用していたアディダスのジャージなりシューズなりをゲットしたりなんかして、ふだんそれらを着用したりもしていた。若気の至りというやつだ。

にしても、どう考えても「似せすぎ」ではないか。

限度ってものがあるじゃないか。

リアムの物まね芸人としてふだん日銭を稼いでいるというんならまだ理解できるが、そういうわけでもあるまいし、第一、本物を完コピしている以上、「本物以上の存在」にはどう頑張ってもなることができないのである。

まあ、「本物以上の存在」になること自体に興味がなく、ただただ純粋にファンだから完コピしてたんだろうが、にしても「ファンだから」という理由で、ファンである人物のことを完コピしたがる人の心理がよくわからないのだ。

かつてエレカシのライブを観に行ったときも、宮本浩次の髪型から服装までやはりばっちり完コピした若い男の客がいるのを見たことがある。

いつかのサマーソニックでとくにファンではないがなんとなく観に行ったスリップノットのライブでは、バンドのメンバーとおなじようなホラー映画ふうの覆面と繋ぎみたいな衣装を着用している完コピ集団がわんさかいて仰天した。

Slipknot

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まあ、スリップノットに関しては、あれは単にコスプレ行為として楽しんでただけなんでしょうけど。

そんな記憶の片隅にあったどうでもいいことをふと思い出したのは、つい先日、某ステーキ店へメシを食いに足を運んだからだ。

その某ステーキ店は関東近郊を中心にチェーン展開しており、俺はそこのステーキが好きで、たびたび足を運んでいる。家のわりと近所に店舗があり、ふだんはそこへ夕飯をよく食いに行くのだが、その日は都内某所へ行く用事があり、そこの近くにその某ステーキ店が店を構えているのを知っていたので、帰りに寄ることにした。

店内はウエスタン調の内装になっており、洋楽のオールディーズがBGMで流れている。店員は全員テンガロンハットを被っていて、ウエスタン調の身なりをそっくりそのまま完コピしている。近所の行きつけの店舗と同じように、まるで西部劇の世界に紛れ込んでいるかのようでたいへん居心地が良い。

 

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そういった点も気に入っている理由だが、なにより俺がこの某ステーキ店をよく利用するのは先ほども申しあげたとおりステーキが美味いからである。

ただしひとつ難点があり、それというのは「店員の接客態度がすこぶるよろしくない」ということだ。

これまでに家の近所のところ以外にも2つの店舗に足を運んだことがあるが、「よろしくなさ加減」はどこもおなじだった。

さすがに店に入ったときには「いらっしゃいませ」、帰りしなには「ありがとうございました」と最低限の声かけはしてくれるものの、これまで足を運んだどこの店舗のどの店員もみな揃って不愛想で、その表情や身振り手振りからは覇気はおろか、「はい、喜んで!」という某焼肉チェーンの店員のごとく嘘で塗り固められた「晴れがましさ」みたいな感情も一切感じられない。

むしろ、なんだか怒っているようでもあり、料理の注文や水のお代わりを頼むにしても声をかけづらくてしかたがない。つーか単純に怖えよ。

俺は基本的に飯屋の接客態度には寛容なほうだ。

というか飯屋に関しては、美味いもんが食えりゃそれ以外のことははっきりいってどうだっていい。

さすがに店の中が汚なかったりしたら気分が悪くなるが、飯が美味い、店内の清掃がしっかりしている、料理が迅速に運ばれてくる、ついでに安い、この4つさえ揃っていれば、「いらっしゃいませ」や「ありがとうございました」だってなくても全然かまわない。

逆に言えば、いくら接客がしっかりしてたり安かったり行列ができる店でも俺個人の好みの味じゃなけりゃ2度と行かない。美人の女店員が行くたびにハグしてくれるとかそういうサ-ビスがあるなら考え直すかもしれないが、基本的に2度と行かない。

で、今回の店はどうだったかというと、うん。

やっぱりよろしくなかったし、怖かった。

というか、ステーキとハンバーグのセットを頼もうとしたら応対した女店員に「それ、ないんですけど!」とキレ気味に返されてしまった。

あとで店のホームページを確認したら、俺の家の近所の店限定のメニューだったことが判明。

俺のリサーチ不足であり、正直スマンかったと謝るべきだったのかもしれないが、にしても、なんでキレられなきゃならんのか。

そしてハタと気づいた。

ハリウッド映画には不愛想な店員がよく登場する。

俺はアメリカに行ったことがないので知らないが、きっとかの国ではああいう接客態度が「ふつう」なのだろう。

で、おそらくこの某ステーキ店もアメリカのそれを真似ているのではないか。

なんていう徹底ぶりなんだ。

「そんなとこまで真似しなくてもいいよ!!!」

つい言いたくなってしまった。

まあ、じっさいのところはどうだか知らないけど。

なにはともあれ、俺はまたしばらくしたら某ステーキ店に足を運ぶだろう。

だって美味いんだもん。