年を取って理解できるようになった音楽と、いまだ理解できない音楽

もはや怒りを通り越してただただ嘆かわしいと感じるばかりだ。昨今のネット民を中心とした、芸能人などのある特定の人物を指して「劣化した」と表現することに対して、である。

やれハゲただの太っただの顔に皺が目立つようになっただの、これらを総じて「劣化した」などと、いったいどのツラ下げて言っているのだろうか。

老化は生きていれば誰にでも起こる自然現象である。わざわざあらためて私が言うことでもないだろう。ホームラン級の馬鹿でもないかぎり誰もが心得ている常識中の常識と言える。

そんな悲しくもどうしたって必ず訪れる現象に対し、無慈悲にも「劣化」という口汚い言葉で罵る。おまえらは人の心を持っているのかと言いたい。

きっとそんな奴らは、自分自身が醜くハゲあがった頭を晒し、皺まみれのニヤニヤとした表情で、でっぷりと突き出た腹をさすりながら、夜な夜なキーボードを叩いているに違いない。恥という感覚が少しでもあるのなら、人に対して「劣化した」などというゲスい言葉を使用するのは即刻やめるべきである。

悪口、イクない。

さてしかし、人は誰しも年齢を重ねていくに従い容姿が劣化していく、劣化って悲しいね、というのは上で書いたとおりだが、年を取るというのはなにも悪いことばかりではない。恐縮ながら私の例を言わせてもらうと、ズバリ、野菜が好きになったことである。

食事時、母親がメニューに加えてくるので渋々口に入れていたあの憎いあんちくしょうども。一人暮らしをするようになってからは憎いあんちくしょうどもなんぞ基本口にすることなどなく、あるとしてもそれは、たとえば定食屋でロースカツ定食を頼むとキャベツも付いてきやがるからで、まあ残すのも勿体ないしついでに食っとくか、ぐらいな感覚だった。それが今では、あれだけ憎くてたまらなかったキャベツが、キュウリやピーマンやトマトが、美味くてたまらない。

私はフォルクスの大ファンである。フォルクスといえばステーキ&ハンバーグの専門のファミリーレストランだ。

当然、フォルクスに行くのは「肉をがっつり食いたいなー」というときだった。

野菜に開眼した現在では、肉類を頼むとセットで付いてくるサラダバー、あれこそが私のメインと言える。ステーキやハンバーグはあくまで、残すのも勿体ないし、まあついでに食っとくか的な存在として口にしているだけだ。

あと、パンも食う。これもセットで頼むと食べ放題で付いてくるので、まあせっかくなのでということで食ってる。ちなみにパンも美味い。

こうして私は昔以上に満足してフォルクスを後にするのである。

それにしても、あれだけ好きではなかった野菜をなんで今さら好むような体質になったのか。

「いいかげん野菜食わないと、おまえ、死ぬぞ」

という身体からの警告であろうか。

まあ、いつ死んでもかまわんが、ともあれ、昔ダメだったものが楽しめるようになったのは単純に嬉しい。

さらに同じようなことは音楽の好みに関しても言える。

R.E.M.小島麻由美フィオナ・アップル

これらミュージシャンの音楽を、若かりし頃に興味本位で耳にした私は、さっぱり理解ができなかった。

当時の私の感想を以下に記す。

 R.E.M.

聴いたアルバム『Automatic For The People』

automatic for the people

automatic for the people

 

感想「ただただオッサン臭いだけの加齢臭まみれの音楽。躍動感がまるでなく、聴いててとにかくかったるい。なぜカート・コバーンがこんなバンドを好きだったのか、さっぱり理解できない」

小島麻由美

聴いたアルバム『セシルのブルース』

セシルのブルース

セシルのブルース

 

 感想「オシャレで不思議ちゃん系なアブない感じを気取りつつ、その実、雰囲気ありきの中身のない音楽。サブカル的なミュージシャンということでなんとなく手にとってみたが、見事に騙された」

フィオナ・アップル

聴いたアルバム『Tidal』

TIDAL

TIDAL

 

感想「ピアノのバラードソングばかりでどの曲も同じに聴こえる。単に暗いだけで退屈きわまりない」

……酷い。なんて視野が狭かったのだろうか。今となっては反省するばかりだ。

R.E.M.小島麻由美フィオナ・アップルも、彼らをフィーチャーした番組がケーブルTVの音楽専門チャンネルで放送されていて、それらをなんとなく視聴したことがきっかけだった。

「あれ…?………なんかいいぞ……」

後日、近所のブックオフに行ったら全部のCDが安価で売っていたので買い直して家で聴いてみた。

はまった。

めちゃくちゃいいじゃねえか!

R.E.M.→「衝動に頼っただけのロックにはない、じつに懐の深い世界観が確立されたアルバム。豊かなメロディ、タイトで瑞々しいバンド・サウンド。とにかく泣ける。素晴らしい」

小島麻由美→「ジャズや昭和歌謡やロックなど様々な要素を取り入れ見事に小島印に仕立て上げている。気怠さと天真爛漫さと危うさが同居した唯一無二の個性が発揮されたアルバム」

フィオナ・アップル→「触れると壊れそうなガラス細工のごとく繊細で情感溢れる世界観にノックアウト。じつに沁みる。最近は夜寝る前にヘッドフォンでこのアルバムばかり聴いている」

我ながら酷い変わりようだ。

まあ、単に私が馬鹿だからわからなかったのかもしれないが、しかしじっさい、年を取ったからこそ理解できる音楽ってあると思う。

とにかく、昔なんとなく興味を持って聴いてみたけどよくわからなかった作品、そういうものがあるのなら、ぜひ時を置いて再び耳にしてみることをお薦めする。

今回、言いたかったのはそういうことだ。

ついでにおまけで、昔なんとなく興味が湧いて聴いてみたけどよくわからず、今現在もやっぱりよくわからない、そんなミュージシャンのアルバムを下に記す。

ちなみに断っておくと、以下で述べられている感想は悪口ではない。

「……よくわからない」

そんな素直な感想を書いたまでである。

まあ、大方の皆さんは悪口がお好きだろうし、私自身、ひさしぶりにテレビで見た芸能人の容姿を「劣化した」と、ネットの謎の掲示板に夜な夜な書き込む程度に悪口は好きだが、このブログが目指しているのは世界平和であり、悪口を書き込むのは私の本意じゃない。だから、下の記述も断じて悪口ではない。

以上のことを踏まえ下記に目を通していただければ幸いである。

 サザンオールスターズ

聴いたアルバム『世に万葉の花が咲くなり

感想「大ヒット曲『涙のキッス』収録のアルバム。当時は今のように性格的にひねくれてなく普通に流行りものも追っかけており、「冬彦さんブーム」の煽りを受けて購入。『せつない胸に風が吹いてた』など、気に入った曲も数曲あったが、全体的に押し付けがましさのようなものを感じてしまって好きになれなかった。もちろんこれはサザン並びに桑田佳祐氏に非があるわけではなく、私の感性が屈折しているせいである。あと桑田氏といえばエロネタだが、正直、絶望的にサムく感じてしまう。もちろんこれもサザン並びに桑田佳祐氏に非があるわけではなく、幼い頃から受けてきた、臭いものには蓋的にお下劣なモノから遠ざける英才教育、その弊害によって品行方正に偏りすぎてしまった私自身の感性にすべての原因があると断っておく」

ミッシェル・ガン・エレファント

聴いたアルバム『Chicken Zombies』

chicken zombies

chicken zombies

 

感想「たしかミッシェルのことを知ったのは、当時深夜にテレビで放送されていた小室哲哉の番組に出演しているのをたまたま観たのがきっかけであったはずだ。『カルチャー』という曲を演奏していた。めちゃくちゃかっこいいと思った。で、このアルバムを買った。やっぱり、むちゃくちゃかっこいいと思った。しかし、ハードボイルドなロケンローラー的な要素を私自身一切持ち合わせていないためか、100パーセント、コミット出来なかった。歌詞もつらい。バリバリ日本人である人たちに『ゲット・アップ・ルーシー』と歌われて、一体どうすりゃいいんだ、と困惑した。これが『ルーシー』ではなく、『ヨシコ』だとか『ハルミ』とかだったら、まだ救われるのだが。なにに救われるのかよくわからないが。いずれにしても、笑いの介在が一切許されていない音楽は個人的につらい」

尾崎豊

聴いたアルバム『放熱への証

放熱への証

放熱への証

 

感想「尾崎豊に関してはあの突然の死去というニュースが大々的にテレビで報じられたのがきっかけでその存在を知り、手に取ったのが死後にリリースされたこのアルバムだった。盗んだバイクで走り出したことも夜の校舎窓ガラス壊してまわったこともなかったせいか、まるで乗りきれなかったというのが正直なところである。もっとエレキがガンガン鳴ってたり、サウンド的にもっと大暴れするような感じだったら好きになったかも」

くるり

聴いたアルバム『図鑑』

図鑑

図鑑

 

感想「同時期に活躍したナンバーガールスーパーカーと並び称されることも多かったくるりナンバーガールスーパーカーも、曲を聴いてすぐに大ファンになったが、くるりだけは何回聴いても夢中になれなかった。なんというか、衝動よりもまず頭で考えているような感じがする頭の良さそうな音楽というか、そういう部分が頭の悪い私には少々合わなかったのかもしれない。ただ、ほかのアルバムに収録されている曲だが『ばらの花』は大好きな曲である。レイハラカミによるリミックスバージョンのほうだけど」

ローリング・ストーンズ

聴いたアルバム『Beggars Banquet』

ベガーズ・バンケット

ベガーズ・バンケット

 

感想「洋楽ロックリスナーとしては是が非でも好きになりたいストーンズ。が、ダメだった。ぶっちゃけ、かったるい。世界中にあまたいるストーンズファンに殺されてもおかしくない感想であるが、素直な心情なのだから仕方がない。もちろん、基本的に歌メロで聴くバンドじゃないっていうのは理解している。リズム、グルーヴ感、ブルース的な感覚。しかし、どうもノレない。ただ、『悪魔を憐れむ歌』は大好きな曲だ。やはりリミックスになってしまうが、ノーマン・クックによるリミックスバージョンはもっと好きである」

レッド・ツェッペリン

聴いたアルバム『Presence』

感想「ストーンズと同様、こちらも洋楽ロックリスナーとしては押さえておきたいレジェンドであるが、いまだに魅力を把握できないでいる。もちろんストーンズと同様、どちらかというと歌メロではなくリズム、グルーヴ感であったり、ブルース的な感覚に身を委ねるべき音楽であるということは頭ではわかっているし、演奏がハードなぶん、ストーンズよりもなんとなく理解できる部分が多いものの、その快感を完全に掴みきったとは言い難い状況である。ただ、ジョン・ボーナムのドラムのすごさはさすがに理解できる。あと、オープニングトラックの『アキレス最後の戦い』は大好き」

この他にも、ブルーハーツ、ジミヘン、デヴィッド・ボウイジェームス・ブラウンなども、アルバムを何度も聴いたもののいまいちその魅力をわからないでいる。いつかその魅力を理解したいものだ。