読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

昔、「コンドーム詐欺」にひっかかりそうになった話

日常

サガミ おやややっ!あれっ つぶつぶ付きコンドーム 5個入

 

オレオレ詐欺」などの凶悪な犯罪行為が横行する昨今。以前、母があやうくオレオレ詐欺にひっかかりかけた経験を持つ私にとっても、けっして対岸の火事とは言えない。

なにより私自身、過去に「ある詐欺行為」にひっかかりかけたことがあるのである。

話は私が高校生として学生生活を送っていた時代まで遡る(20年くらい前)。

ある日の休日のことだった。家族はみな外出中で、バリバリの高校生であり実家住まいだった私は、家でひとり、テレビを見たり音楽を聴いたりと、ぐうたらな時間を過ごしていた。

昼下がりのこと。突如、来客を告げるチャイムが鳴った。

「ん? 誰だろう…?」

玄関のドアを開けると、30代半ば~40くらいと思しきおっさんが立っていた。

おっさんの用件というか言い分を要約すると、こんな感じだった。

①今しがたお宅の自販機でコンドームを購入しようとしたのだが、肝心のコンドーさんが出てこない。

②おかしいなと思い、機械に投入した500円玉硬貨2枚を戻そうとしたが、それも出てこない。

③じつは昨日も購入しようとして同じように500円玉硬貨2枚を入れたが、やはりコンドーさんも、戻そうとした硬貨2枚も出てこなかった。

④それでお宅に告げようと思ったが留守だったので、ことの経緯と自分の連絡先をメモした紙を自販機に張り付けて帰ったのだが、連絡がないのはどういうことだ。

⑤まあ、そんなわけだからして、お金合計2千円を返して欲しい。

じつは私の両親は実家にて自営業を営んでいる傍ら、ジュースと煙草、加えて高級スキン、ようするにコンドームの自動販売機を家の周りに設置・販売しており、かようなわけで、くだんのおっさんが訪ねて来たのだった。

で、この時点で「おかしいな…」と思った私であったが、おっさんに促されるまま、とりあえずコンドーさんの棲む自販機が設置されている場所へ行ってみた。

昨日、おっさんが張り付けたというメモは、ない。

剥がれてどこかへ飛んでいってしまったのだろうか。

ためしに私の500玉硬貨を投入してみると、たしかに様子がおかしい。商品の選択ボタンを押しても、コンドーさんも、戻そうとした硬貨も出てきやしない。

前述の通り自販機を管理する両親は留守であった。

私は補充の手伝いでジュースと煙草の自販機を弄くったことはあったが、コンドーさんが棲む自販機は、元々そう頻繁に売れないことや若さゆえの恥ずかしさもあって、弄くったことはなかった。

そんなわけで、自販機を開け内部を確認するための鍵のありかについて知る由もなかった。第一、鍵のありかがわかって、自販機の内部を確認したところで、故障かそうでないかを判断することもできるはずがない。これは困った。

「すいません…。ちょっと管理している両親が不在なので、お手数おかけしますが、後ほど御連絡いただけませんか…?」

私は言った。

おっさんはこう言った。

「仕事の関係で3年間海外へと出張するのだが、もう家は引き払ったためこのまま家に帰らず空港へと直行するので、今すぐ返してもらわないと困る」

いったい何を言っているのかこのおっさんは。そんな取ってつけたような都合、信じられるわけないし、普通だったらまず先に昨日の金を返してもらいに訪ねてくるはずだろう。それを2日連続で、しかもこれから空港へ向かうその足でまた自販機にコンドームを買いに来るって、なんじゃそりゃあ!!!

と、私は心の中でつっこんだ。次第にこのおっさんに対して怒りも湧いてくる。

そもそも大体からして、このおっさんの格好がなにか、いや、あきらかにおかしかった。

①ボサボサで汚らしい、とてもオシャレとは言えない茶髪(さらにその髪は背中まで伸び、ゴムで結わってある)

②剃り残しが目立つ青々とした口元

③とても残念な感じに年期が入ったケミカルウォッシュのジージャン&ジーンズ

④こ汚いバッシュ

⑤首元にはまばゆいばかりに光り輝くダサダサの金(たぶんニセモノ)のネックレス

いやちょっとした変態ではないかこいつは。

とてもじゃないがこれから仕事で海外へ出張するような企業戦士には見えないし、どちらかといえば平日の昼間にパチンコ屋でうろついていそうな風体をしたおっさんである。

臭い。胡散臭すぎる。

そんなわけで当然ながら「ちょっとアンタおかしいんじゃねえか」と言おうとした私であったが、それでも客は客だ。出かかった言葉をぐっと呑み込んだ。

それに、げんに自販機の様子がおかしいのはたしかであり、たとえ私の確信どおりおっさんの主張が虚言であるとしても、それを立証する手立てがない。

胡散臭すぎのこのおっさんに不本意ながらも金を渡すしかないのか。じつに困った。

あっ…。親父のケータイに電話すればいいんじゃないか。なんで今まで気がつかなかったのか。

これで化けの皮が剥がれるのは間違いないだろう。よし、いまなら許してやる。さあ、電話する前に「参った」と言っちまいな!

しかしながら、そのことを告げても、おっさんは「いいですよ」と自信満々の様子で、まったくひるむ気配がないのだった。やっぱりマジなのか…?

とにもかくにも、私は親父のケータイへ電話した。電話に出た親父は昨日、自販機を点検したが、メモなどは張り付いてなかったと言っている。「やっぱりな」と納得しつつ、親父に事の成り行きを一通りを説明し終えると、目の前にいるおっさんと代われと言う。動揺するでもなく私のケータイを受けとるおっさん。

電話口から聞こえてくる親父の反応は見事だった。

「なにいってんだアンタ」

「いや、だからコンドームが出ないんですよ! それでお金も返ってこないし、今すぐこのまま海外へ出張しなきゃいけないから、とりあえずお金返して……」

「嘘つけ! そんな話あるか!」

「いや、だからコンドームが……」

「うるせえ! 警察につき出すぞ!!」 

「…わ、わかりましたよ! 帰ればいいんでしょ!!」

電話口にコンドームコンドーム繰り返すこのおっさんはちょっとどうなのかと思ったりもしたが、とにもかくにもすっかり意気消沈した様子のおっさんは、私に電話をさしだすと無言で立ち去っていった。

「手ぶら」で。

このおっさんの事情というか筋書きの細かいところはまったくもって存じ上げない私であったが、これから海外へ直行するってのにさすがに「手ぶら」はないんじゃないかと、やはり心の中で高速でつっこんだ私である。

後ほど両親が帰宅。問題の自販機を開けてみると、コンドーさん&硬化が落ちてくるべき部分にボード紙らしきものが無理やり押し込められていて、なるほど、これではいくら私がボタンを押してもコンドーさんが出てくるはずがないし、500円玉も戻ってこなかったわけだ。ちなみに、おっさんが投入したと主張していた500円玉も、私がおっさんとのやり取りしている際に投入した1枚以外入ってなかったのは言うまでもない。

まあ、こういう笑える詐欺ならいいが、いや良かないが、年金情報流出問題で新たな詐欺も懸念される今日この頃。世間のみなさんもヘンな詐欺にひっかからないよう願う次第である。