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読書:「ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実〈新装版〉/ジェフ・エメリック」‐ビートルズは神でも仏でもなく、どこにでもいるフツーのあんちゃんたちだった

読書 音楽

かつてビートルズのサウンド・エンジニアを勤めていたジェフ・エメリックが刊行した『ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実』という本を読んでいたら、とてもおもしろい記述があった。

といっても、それはビートルズのレコーディング方法にまつわる記述などではない。

いや、たしかにそういった事柄についても興味深い事実がいろいろ載っていたし、そういった意味でもひじょうに読み応えのある本なのだが、個人的にもっとも心を奪われたのが、ジョージ・ハリスンと、当時ジョン・レノンの恋人であったオノ・ヨーコが起こした、将来のビートルズ解散を予感させる「ある事件」に関する記述である。

その「事件」はバンドが『ホワイト・アルバム』を製作しているさなかに起こったという。

『ホワイト・アルバム』製作当時といえば、メンバー間の不仲が生じ、バンド内の関係がぎくしゃくし始めた時期だというのはファンの間ではよく知られた話だ。

 

White Album (Dig)

 

その理由のひとつとして言われているのが、バンドがレコーディングしているスタジオにオノ・ヨーコが顔を出すようになったことだ。

ヨーコはジョンと恋仲にあったとはいえ、もちろんビートルズのメンバーではないわけで、楽曲制作やレコーディングといった一連の作業に直接的に関わるような存在ではない。ようするにヨーコは完全な部外者であり、ジョン・レノン以外のメンバーはそんな彼女がスタジオにいるのを快く思っていなかったという。

ヨーコと片時も離れたくないジョン。イラだつポール、ジョージ、リンゴ。なんとも言えぬ緊張感で満たされるスタジオ内。

そんなある日、レコーディングのためスタジオ内で作業するビートルズのメンバー、スタッフ。皆が真剣に作業している中、ふいにヨーコがスタジオ内に置いてあった「ある物」に手を伸ばした。

お菓子だ。

いま本は手元になく、なんのお菓子であったかは忘れた。たしかビスケットと書かれていたのではなかったか。

とにかく腹が減ったのだろう、なんの気なしにビスケットに手を伸ばしたヨーコはそれを躊躇なく口に運んだ。だが、そのビスケットはまずいことに「ジョージのビスケット」だったのだ。

「な…。き…貴様! そのビスケットは俺が食うために用意していたものだあああ! ふざけやがってえええええええええ!!!!」

激昂状態のジョージ。

天下のビートルズのメンバーがビスケットを勝手に食われたといって憤慨していたのである。

爆笑した。

まあ、さすがにこの「ビスケット事件」が直接的な要因となりバンドが解散したわけではないだろうが、ようするにメンバー間の意思疎通がちゃんと取れておらず、そんな状態で四六時中顔を合わせているせいで、勝手にビスケットを食いやがっただの、どうでもいいような些細なことでも頭に来てしまうほどにバンド間のストレスが高まってしまっていた、ということなのだろう。

そりゃビートルズのメンバーだって、神でも仏でもなく人間だ。たとえ志を共にし、結果的に音楽史に多大なる影響を及ぼした伝説的なグループであっても、ひとりひとりは考え方も生き方も異なる人間であって、そこらへんは集団として構成されている家庭や会社と同じである。

にしても、まさかビートルズの本を読んで爆笑するとは思わなかった。

 

ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実 <新装版>

ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実 <新装版>