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映画『ダークナイト』‐「ちゃんとギャグになってない」のが凄い。ただ、ヒロインはギャグ…?‐

公開前からひじょうに前評判が高く、そして実際前評判どおりの素晴らしい出来であった『ダークナイト』であるが、なにしろことが「バットマン」なだけに、観るのにかなり躊躇したのが正直なところである。

なんかコウモリの格好をしたコスプレ野郎が、これまたトランプのジョーカーの格好をしている顔面白塗りのコスプレ野郎と闘って、で、まあ、なんだかんだありつつ、最後は世界が平和になって良かったね。で、ハッピーエンド。

そんなような感じだと想像していたし、おそらく大方の人間も同様だったろう。

ところが本作に関しては、いかにもコミック原作モノっぽい痛快アクション冒険活劇でなければ、笑いあり涙ありのコメディ作でももちろんなく、きわめてシリアスな内容の作品であるという。

であるので、もっぱら危惧していたのは、コウモリコスプレ野郎や顔面白塗りコスプレ野郎がスクリーン中を所狭しと駆けずり回るような映画を、はたして大真面目な態度で鑑賞することができるのか、ということであった。

なにしろ、一歩間違えばギャグになってしまう可能性がじゅうぶんである。

いや、それがある種の「ネタ」として昇華されていて笑えるのなら全然いい。

問題は、笑えもせず、ただただ「失敗しているだけの作品」であった場合だ。これが一番タチが悪い。

それだけに、実際観て、リアリティ溢れる描写の数々に大変驚かされた。

なにせ、きわめてシリアスな映画である。「ギャグにならないように」と、話の筋や登場人物のセリフ、作品全体の雰囲気、音楽に至るまで、細心の注意が払われたに違いない。

中でもとりわけ気を遣ったのがキャスティングであったろうと想像する。

バットマンといえば、コウモリを模したマスクと鎧である。まあ、これはいいとして、問題はマントだ。マントを羽織ってギャグにならない人間はそうはいない。

たとえばこれがマット・デイモンだったら、どう考えてもまずいに決まっている。ジャック・ブラックだったらそれこそギャグにしかならないだろうし、ついでに「ジャ」繋がりでジャンボ尾崎がコウモリの恰好してマントを羽織っている姿も想像してみたが、考えるだけで馬鹿馬鹿しい気分になろうというものである。

むろん監督は馬鹿ではなかった。バットマン役には、マット・デイモンでも、ジャック・ブラックでも、ましてやジャンボ尾崎でもなく、クリスチャン・ベールを起用したからだ。クリスチャン・ベールで本当に良かった。

同様のことは、ジョーカーにも言える。ヒース・レジャーという、繊細そうでどこか危なっかしい雰囲気がある俳優を起用したからこそ、狂気的でカリスマ性のあるジョーカーというキャラクターを見事に表現することができたのだ。

たとえば、顔面白塗りで高笑いするニコラス・ケイジジャンボ尾崎を思い浮かべていただきたい。ギャグである。ヒース・レジャーで本当に良かった。

いずれにしても、キャスティングを間違えた映画は概ねその内容自体も間違う。『スパイダーマン』のサム・ライミはヒロインにわざわざブスを起用したが、あれはおそらく『スパイダーマン』の根底にギャグの要素があるか、またはサム・ライミがブス専であるか、そのどちらかに違いない。

……という内容の記事を以前べつのブログに投稿したら、読んでいただいた人から「『ダークナイト』もヒロインはブスです」というコメントを頂戴した。

たしかに普通にブスでした。失礼いたしました。

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