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そしてラミレスは「“ゲッツ”問題」を中空にほっぽり投げたままにして、球界を去っていった。

プロ野球をまともに見なくなって久しいが、そういえば、ラミレスがいつのまにか引退していて、先月には引退セレモニーが行われたことを、つい最近知った。

 

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ラミレスとは何者か。

読んでいる人がいないのを承知で誰もいない中空に向かって一応説明すると、「ラミレス」とはつまり、プロ野球の助っ人外国人選手としてヤクルト、巨人、ベイスターズに在籍していたアレックス・ラミレスのことだ。バッターとして、首位打者を1回、本塁打王を2回、打点王を4回獲得しており、歴代助っ人外国人選手の中でもトップレベルといっていい成績を残している超優良助っ人外国人選手としてもさることながら、打席でホームランを打った後に「あるパフォーマンス」をすることでも知られていた。

プロ野球ファンにはお馴染みだろう。

そう。
「ゲッツ」だ。

 

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一昔前にシンディ坂本だかウッディ坂下だかいうお笑い芸人が流行らした例のあれ。

あのあれを、ホームランを打った後に、必ず、やる。

テレビカメラに向かって、さも得意げな調子で、やる。

「もういいよ」

とテレビの画面に向かって私が言っているにもかかわらず、やる。

私が断固拒否っているにもかかわらずなぜにラミレスがあそこまで「ゲッツ」をしつこくやりまくっていたのかといえば、まず第一に日本語が理解できない。

というより、いくらテレビに向かって言ったって本人に伝わるわけがない。

という根本的な問題を抱えていたこともさることながら、一番の理由はやはり、

「ホームランを打った後に“ゲッツ”をやれば、ファンが喜ぶ」

とラミレスが思い込んでいた、ということであろう。

ラミレスには申し訳ないが、ズバリ言って、そんなことをしたって誰も喜んではいなかった。

残酷な話だが、これはもう、事実である。

たぶん喜んでいたのはごくごく一部の野球ファン並びにラミレスファンと、ごくごく一部のパンティ坂井のファンだけ。だったはず。

大概の人間は、

「いまさら“ゲッツ”って…」

ってな感じで、困惑していた。はずである。

ちなみにウィキペディアで調べたら、ラミレスが「ゲッツ」を披露するようになったのはグッディ坂田がまさにブレイクした2003年からであるとのこと。

途中、小島よしおの「そんなの関係ねえ」や藤崎マーケットの「ラララライ体操」なんかも取り入れたことがあったが、どんなパフォーマンスの形をとっても最終的に「ゲッツ」で締められるのは終始一貫していた(ずっと見ていたわけではないのでよくは知らないが、おそらくそのはずだ)。

当然ながら前述の引退セレモニーにおいても「ゲッツ」を披露したとのこと。

12年である。

子供たちはもちろん、酔っ払った大人たちなんかからも散々真似し尽くされ、飽きられ、消費し尽くされ、もはや誰からも真似されることはなくなった「ゲッツ」を、12年間もの長きに渡って披露し続けていたのだ。ドンディ坂見川に次いで世界で2番目に「ゲッツ」を披露している人間であることは間違いなかろう。

どんだけ気に入ってたんだ。

「マジで寒いわ! いいかげんにしろ!」

何度そう思ったことか。

とはいえ、ラミレスばかりに罪をおしつけてはいけない。というより、ぶっちゃけ、ラミレスは言うほど悪くない。というか、むしろラミレスはいい奴だ。まあ、知らないが。

しかし、なにせ人前であれほど無邪気に「ゲッツ」をやれる輩である。悪い人間であろうはずがないではないか。

だから、ラミレス以上に責められるべきなのは言わずもがなだが、各球団でチームメイトだった選手らだろう。チームの主軸である外国人選手が長年に渡って暴走を繰り返しているのである。常識的な良心を持っている人間なら普通、

「いや、あのさ。……それ、もう流行ってないからやめたほうがいいよ」

と、やさしく忠告してあげるだろうからだ。

そう。これはおそらく、プロ野球界内部に外国人差別という名のいじめが横行していることを意味している。

つまり、

「アイツ(ラミレス)、寒いな。おもしれーから、このままほっとこうぜ」

と、誰かリーダー的な選手が先導役となり、チームメイト皆がラミレス潰しに加担していた、と、そういうわけだ。

なんてひどい話なんだ。謝れ! ラミレスに!

でも、よくよく考えたらやっぱりラミレスも悪い。

だって、パクリじゃねえか。

人が一生懸命考えてヒットさせたギャグ、なにパクってんだこの野郎。

謝れ! ヨンディ宇野に! もしくはノルマンディ巻上に!

まあしかしだ。ここまで長々と書いてきてなんだが、いまここで述べてきたことは、じつのところ、それほど大した問題ではない。

というか、大した問題ではないというか、正直100パーどうでもよい。

綺麗さっぱり忘れてほしい。

なぜなら、もっとも憂慮すべき点は別にあるからである。

どういうことか。

ラミレスの出身国に注目していただきたい。

そう、ベネズエラである。

大半の日本人はベネズエラのことなんてよくわからない。そして、ベネズエラ人だって日本のことなんてきっとよくわかってないと思う。

そこにきてラミレスの大活躍である。ラミレスが母国でいかほどの立場なのか知らないが、日本で一番ポピュラーといっていいスポーツ競技の主軸を任されていたのだから、それなりに名は通っているのだろう。いや、ひょっとしたらかの国では現役時代のラミレスの活躍っぷりが連日連夜に渡って詳しく報道され、いまや国民的ヒーローぐらいの立場になっているのかもしれない。

これはやばい。

確実に流行ってる。「ゲッツ」が、かの国で。

ベネズエラの人々にとって日本といえば、すでに「サムライ」「スシ」「ゲッツ」ぐらいになっているはずだ。ことによったら、

「ナンカ、ニホンデハ挨拶ガワリニ“ゲッツ”ヲヤルノガ普通ラシイヨ」

などと、誤解されまくっている危険性さえあるのである。

かの国において誤解されているぐらいならまだいい。

が、人生はなにが起こるかわからないものだ。

近い将来、ベネズエラに旅行しにいくかもしれない。ましてや、国際化著しい昨今の社会環境である。いつなんどき己が勤務している会社にベネズエラ人の上司や部下が配属されてくるとも限らないのである。

やられるぞ。「ゲッツ」を。

「アッ! ニホンジン、ミ~ッケ。ゲッツ!」

って。

どうする?!

どうするって、困るしかないのである。

当の本人は引退してしまったが、ラミレスの「“ゲッツ”問題」はいまだ先行きが不透明なままである。

 

 

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(↑例の「寒いアレ」)