映画『ゴーストライダー』‐「カッコいいニコラス」がてんこ盛り‐

ニコラス・ケイジ主演の『ゴーストライダー』が深夜にテレビで放送されるというのでなんとなく録画し、後日観ようと思ってビデオを再生したら、映画本編が始まる前にニコラスの過去のスキャンダルを振り返るミニ情報みたいなのが放送されていた。

そのミニ情報番組によると、なんでもニコラスには重度の浪費癖があるらしく、高級車50台、ジェット機、ヨット、城を3城、バハマ諸島の島2島などを次々と買い漁り、結果、気づいたら借金まみれの生活に突入し、ついには破産寸前までに追い込まれていた過去があるという。

ちなみに友人であるジョニー・デップの助けなどもあり、現在は借金問題はほぼ解決したとのことである。

傍目には順風満帆過ぎると言っていいほどのキャリアを歩んでいるとしか思えなかったニコラスも人の子、自身の心の内に潜む満たされぬ思いのようなものが噴出したゆえの行動だったのではないかと推測される。

つまり、それまでニコラスが出演した数々の映画作品、それに伴って手に入れた地位や名声、莫大なギャラも、ニコラスの心の隙間を埋めるまでには至らなかったというわけだ。

いったい、ニコラスの心の内に潜む「満たされぬ思い」とはなんだったのか。

答えは意外な所にあった。そう、『ゴーストライダー』だ。

 

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「カッコいい俺」

ニコラスが、足りねえ、満たされねえ、と常日頃から不満に感じていたものは、おそらくそれだ。

本作『ゴーストライダー』は、そんなニコラスが求めてやまぬ「カッコいい俺」という大いなる理想を映画の力を借りて具現化せしめた作品と言えよう。

主演ニコラスが演じるのは、悪魔に呪われし髑髏のライダー。普段は天才的なバイク・パフォーマーとしての顔を持つ一方、夜になると髑髏のライダー、すなわちゴーストライダーに変身する。悪魔どもを倒すため、様々な苦難に立ち向かうダーク・ヒーロー、それがゴーストライダーなのだ。

もうこれだけでも充分「イカした感じ」だが、そんなニコラスの「イカした感じ」に輪をかけているのが作中登場するヒロインの存在である。

この人がもう、とにかくニコラスにメロメロなのである。アツアツの恋人同士であったのにニコラスの勝手で突然行方をくらまされ、で、10数年ぶりに再会してデートの約束したと思ったらそれもすっぽかされたというのに「愛してる」の求愛宣言だ。

これだけ愛されりゃ男冥利に尽きるというものだが、「危険な旅路にオマエを一緒に連れていけない」と別れを宣告し独りバイクに跨り荒野を駆け抜けるニコラス。

「ゴーストライダーさん、カッケー!」

これをブラピやディカプリオが演じていたら誰しもがそう声を上げるだろうが、もちろん演じているのはブラピでもディカプリオでもなくニコラスである。

「なにカッコつけてんだ! 顔がモト冬樹のくせに!」

そりゃ誰だって、そう言いたくなろうというものだろう。

しかし本作の最大唯一の目的は、なにより「カッコいいニコラス」を見せつけることにあり、さすがそのための「細かな部分の演出」にも一切抜かりはなかった。

主人公の青年期を演じる俳優にはニコラスとは似ても似つかぬイケメンを抜擢。で、その後のおっさんになった主人公をニコラスが演じているわけだが、その頭頂部はいつものハゲ頭ではなくしっかりとヅラを装着という反則技を披露。

ちなみに本作のアマゾンのレビューを確認したところ、

「敵キャラが激弱なので対決シーンが盛り上がりに欠ける」

という声が多数寄せられていたが、これは見当違いの意見である。

敵キャラが弱いのではない。「主人公が強すぎる」という、これはニコラスのカッコよさを際立だせるための、そういう演出なのだ。

「な。オレってカッケーだろ?」

ドヤ顔でウインクするニコラスが浮かんでくるような内容ぶりに頭がクラクラした。

ちなみに『ゴーストライダー2』もあるらしい。

いったい続編では、どんな「カッコいいニコラス」が観られるのだろうか。

だが、さすがにそれは観たくない、と思った。