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映画『マイ・ボディガード』‐炸裂! アナル爆弾!‐

トニー・スコットの映画は好きだ。トニー・スコットの映画を観ると、「まあ、細けぇことは気にすんな」みたいな、とても清々しい気分になる。お馴染みの大仰な映像効果も含め、ラテン・ミュージックにも似たグルーヴィなリズム感というか、いい意味での馬鹿力というか、ともかく、とてつもない突進力がトニー・スコットの映画には終始一貫として流れているのだ。

そんなトニー・スコットだから、悪役の殺しっぷりもなんだかもの凄く豪快である。

元殺し屋で暗い過去を持ついかにも小難しげな感じのボディガードを演じるデンゼル・ワシントン。そんなデンゼルが珍しく心を開いたボディガードされる側の少女ダコタ・ファニングが、悪党にさらわれたうえ殺されてしまう。復讐に燃えるデンゼルが悪党一味を次々と成敗していくわけだが、その内のひとりの殺され方がじつに悲惨だ。

ケツの穴に火薬を詰め爆死させる。

アナル爆弾である。

しかもご丁寧なことに、詰めた本人デンゼルによる爆発までの5分間カウントダウン生実況中継付きだ。

こないだ『バラいろダンディ』で湯山玲子さんという人が『ラストタンゴ・イン・パリ』について、「一般映画ではじめてアナルセックスを描写した作品」と紹介していたが、本作『マイ・ボディガード』が「一般映画ではじめてアナル爆弾を描写した作品」であるのは間違いないだろう。

まあ、べつにアナルに火薬を詰めようが、なんなら地球儀や無洗米を詰めようが、本人の勝手なので好きにしてほしいと思うが、にしても、あわてふためく悪人を尻目に終始冷静沈着な対応をするデンゼルなわけだが、その指先は当然「うんこ臭くなっている」はずで、嫌じゃないのか。

と気にするのは、几帳面なA型の人間であろう。

B型の私は、アナル爆弾で爆死という壮絶きわまりない最期を遂げた悪人役の俳優氏が、自分の子供に対してこの役のことをどう説明したのかが大変気になった。

「ねえねえパパ。パパが今度出る映画って、どんな映画なの?」

「それはねジェシカ、デンゼル・ワシントンさんっていうとっても有名な人が出ている『マイ・ボディガード』という映画だよ」

「ふぅ~ん。パパはどんな役なの?」

「とっても悪い人の役だよ。デンゼルさんにお尻の穴に火薬を詰められて、最期は爆発して死んじゃうんだよ」

「お尻は痛くなかったの?」

「お芝居だから平気さジェシカ。本物のパパはお尻に火薬は詰められてないし、これからも絶対に詰められることはない。爆発だってしないさ。ジェシカとママに誓うよ」

「パパってかっこいい!」

いや、かっこよくはないと思う。

ブラピでもトム・クルーズでも、かっこいい人間が映画で悪人を演じたとしてとりあえず、けっしてアナル爆弾で死ぬことはない。これは断言していい。

むろん、アナル爆弾で死ぬのは嫌だ。

自分だったら嫌だし、父や母、兄や妹または自分の子、あるいは仲の良い友人や知人が仮に俳優をやっていたとして、「今度やる役はアナル爆弾で死ぬ悪人の役だよ」なんて説明されたら、もう、喜んでいいんだか悲しんでいいんだか、もの凄くリアクションに困るだろう。

しかし、役者だからこそ、というのがあるのかもしれない。アナル爆弾で爆死なんて、現実の世界ではなかなか体験できる機会がないだろうし、というか誰も体験したくないだろうし、だからこそ是が非でも演じてみたいと思うのが真の役者魂というものではなかろうか。

いままさにアナル爆弾で爆死せんとする俳優氏の最期の表情が、心なしか涙目プラス頬が赤らんでいるように見えたのは、アナルに火薬を詰められた恐怖と恍惚を表現したものなのか、あるいは、アナル爆弾で爆死という大変難しい役柄を完璧に演じきったゆえの満足感からなる上気したそれだったのか。私には知るすべはないが、いずれにしてもそんなふうに映画を観る人間は、おそらく馬鹿に違いない。

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